がん:収斂によるPTEN欠失がPI(3)Kα阻害剤に対する臨床耐性を引き起こす
Nature 518, 7538 doi: 10.1038/nature13948
広範囲にわたる詳細な腫瘍ゲノム塩基配列解読により、腫瘍の不均一性が新たな観点から見直され、異なるクローンから生じる転移の進化についての重要な手掛かりが得られている。複雑性をさらに増す要素として、腫瘍の進化は、感染性疾患に見られるのと同様に、治療による選択圧の影響を受ける可能性がある。本論文では、活性型PIK3CA(phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate 3-kinase, catalytic subunit alpha;PI(3)Kα)変異を持つ、ある転移性乳がん患者(発端患者)で腫瘍ゲノムの進化を研究した。この患者はPI(3)Kα阻害剤BYL719による治療を受け、持続的な臨床応答が見られたが、最終的にはこの薬剤に対する耐性が生じ(肺転移の出現)、その後間もなく死亡した。迅速な剖検により合計14か所の転移部位から試料を採取し、塩基配列解読を行った。治療前の腫瘍と比較した場合、全ての転移病変部でPTEN(phosphatase and tensin homolog)の1コピーを喪失しており、また、BYL719に治療抵抗性を示すようになったこうした転移病変部では、PTENにさらに異なる遺伝的変化が起こってPTENを発現できなくなっていた。これらの結果の意味を理解するために、BYL719による治療を受けた他の6人の患者についても調べた。これらの患者のうちの1人でPTENの両対立遺伝子性の欠失が起こっており、また別の2人の患者では原発腫瘍に存在したPIK3CAの変異がプログレッション時には検出されなかった。我々の知見の機能的特徴を明らかにするために、いくつかの前臨床モデル(BYL719にもともと感受性を持つ細胞株および我々の発端患者由来のPTENヌル異種移植片の両方)で、PTENノックダウンの効果を検討したところ、BYL719耐性が生じることが分かったが、同時にPI(3)K p110βを遮断すると、この耐性表現型を元に戻すことができた。我々は、PTENの異なるゲノム変化を持つ別個の転移部位の遺伝的な平行進化が、PI(3)Kα阻害に対する耐性を示すPTENヌル表現型への収斂を引き起こすと結論する。

