材料化学:平行配向ナノシート間の静電反発力に起因する異方的力学特性を示すヒドロゲル
Nature 517, 7532 doi: 10.1038/nature14060
リニアモーターカー、車両サスペンション、非接触ベアリングなど、磁気反発力や静電反発力を用いた機械が実用化されている。これに対して、材料設計では、引力相互作用に重点を置くことが多く、例えば、高分子系複合材料の多くでは、無機フィラーを高分子マトリックスと相互作用させて、機械的強度を高めている。しかし、関節軟骨は、静電反発力を利用して比類のない機能効率を実現できることを示す優れた例である。すなわち、関節軟骨によって、高い圧縮力の下でもほぼ摩擦のない関節内部の機械的運動が可能になっている。今回我々は、負に帯電した単層のチタン酸ナノシートを埋め込んだ複合ヒドロゲルが、ナノシート間の静電反発力に起因する特異な異方的力学特性を示すことを報告する。我々は、水中にコロイド分散した単層チタン酸ナノシートに強磁場を印加すると、ナノシート同士が面と面を向き合わせて配向することを偶然見いだした。このとき、ナノシート間に働く静電反発力は最大となり、ナノシートの面間隔が一様に大きい準結晶性の構造秩序が巨視的な長さスケールにわたって生じる。我々は、in situの光誘起ビニル重合を用いて、コロイド分散液をヒドロゲルに変え、この過渡的に生じた構造秩序を固定した。その結果得られたヒドロゲルは、磁場中で平行配向した帯電した無機構造体を含んでおり、埋め込まれたナノシートの向きに対して垂直に圧縮力をかけると、その力に抵抗するが、ナノシートの向きに平行にせん断力をかけると容易に変形する。関節軟骨の構造にヒントを得た、反発する異方性静電体を複合材料に埋め込むという発想は、今後の機能性ソフトマテリアルの開発に向け、新たな可能性を開くものである。

