Letter

気候科学:大気循環の変化に起因する近年の北半球成層圏における塩化水素の増加

Nature 515, 7525 doi: 10.1038/nature13857

地球大気における塩素の量は、長寿命の塩素を含む人為起源のソースガス、とりわけクロロフルオロカーボンの大量放出によって、1970年代から1990年代にかけて著しく増加した。クロロフルオロカーボンは、化学的に不活性であるため、全球規模で対流圏において輸送と混合が起こった後、成層圏に到達すると塩素原子を放出し、オゾンを破壊する。南極大陸上空のオゾンの大幅な減少は、塩素原子と臭素原子を含む主なハロゲン化炭化水素の製造を削減するスケジュールを策定する国際条約である、1987年のモントリオール議定書の締結と署名を促進した。予想されたように、議定書が発効された結果、地表付近の全塩素濃度は1993年に最大となり、その後年間0.5~1%減少している。リモートセンシングデータから、成層圏の塩素は1996年以降に最大となり、その後年間1%近く減少していることが明らかになっている。これは、地上での塩素ソースガスの観測やモデル計算と一致する。本論文では、成層圏の主な塩素貯留ガスである塩化水素(HCl)が、2σの水準で、最近かなり増加していることを示す地上データと衛星データを提示する。この傾向は2007年頃から北半球の成層圏下部に現れており、地表付近のソースガスの単調な減少と対照的である。モデルシミュレーションを用いて、この変則的な増加傾向の原因は、数年間にわたって連続して起こっている北半球の大気循環の減速であることが分かった。これによって、より年代の古い空気が成層圏下部へ輸送され、相対的により多くのソースガスがHClへ変換されたのである。この短期的な力学的変動は、他の成層圏トレーサーにも影響を与えることが予想されるため、成層圏オゾン層の変遷を研究する際には注意する必要がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度