医学:遊離αグロビンによるHSP70の隔離はβサラセミアでの無効造血を促進する
Nature 514, 7521 doi: 10.1038/nature13614
重症型βサラセミア(β-TM)は遺伝性の異常ヘモグロビン症で、ヘモグロビンのβグロビン鎖合成量が低下して遊離のαグロビン鎖が蓄積し、これが毒性のある凝集体を形成することが原因である。β-TMを引き起こす分子レベルの異常については詳しく知られているが、β-TMに見られる無効造血(赤芽球の分化加速、成熟停止、多染性赤芽球段階でのアポトーシスを特徴とする)の原因となる仕組みについては、ほとんど分かっていない。我々は以前に、正常なヒト赤芽球の成熟には、成熟過程の後期段階でカスパーゼ3の一時的な活性化が必要であることを実証した。赤血球形成のマスター転写因子である赤芽球転写因子GATA-1はカスパーゼ3の標的ではあるが、赤芽球の分化過程では切断されない。我々は、ヒト赤芽球では、シャペロンである熱ショックタンパク質70(HSP70)が構成的に発現されていて、成熟の後期段階で核内に移動し、GATA-1をカスパーゼ3による切断から守ることを明らかにしている。この広く見られるシャペロンの主要な役割は、細胞質ストレスによって変性したタンパク質の再折りたたみを助け、その凝集を防ぐことである。今回我々は、ヒトβ-TM赤芽球の成熟の際には、HSP70が遊離αグロビン鎖と直接結合することをin vitroで明らかにする。この結合の結果、HSP70が細胞質に隔離されてGATA-1が保護されなくなるため、成熟が最終段階で停止し、アポトーシスが起こる。核に運ばれるHSP70変異体、あるいはカスパーゼ3で切断されないGATA-1変異体を導入すると、β-TM赤芽球の最終的な成熟が回復する。これは、β-TMに対する新規な標的化治療に対する合理的根拠となるだろう。

