分子生物学:ホメオドメイン転写プログラムに必要な、エンハンサー–matrin-3のネットワーク相互作用
Nature 514, 7521 doi: 10.1038/nature13573
30年前に報告されたホメオドメインタンパク質は、標的遺伝子の調節因子として、発生に必須の役割を担っているが、ホメオドメイン因子類の転写活性の基となる分子機構は、ほとんど解明されていない。今回我々は、発生に必要なPOU-ホメオドメイン転写因子Pit1(別名Pou1f1)を調べ、Pit1が結合したエンハンサーが核のmatrin-3リッチネットワーク/構造に結合することが、Pit1が調節するエンハンサー/コード遺伝子転写プログラムの効率的な活性化に極めて重要であるという意外な知見を得た。この結合が起こるためには、Pit1のSatb1およびβ-カテニンへの結合が必要である。自然発生するヒトPIT1の優性ネガティブな点変異(R271W)は、複合型下垂体ホルモン欠損症を引き起こすが、この変異により、Pit1はβ-カテニンおよびSatb1と結合しなくなるため、matrin-3リッチネットワークにも結合できなくなり、Pit1に依存したエンハンサー/標的コード遺伝子活性化が妨げられる。このような活性化の異常は、Pit1のR271W変異タンパク質をmatrin-3ネットワークに人為的に連結し、本来必要なβ-カテニンやSatb1と前もって結合しなくても済むようにすると救済される。matrin-3ネットワークに係留したPit1のR271W変異体では、Pit1に依存したエンハンサーの活性化やp300のようなコアクチベーターの動員が回復し、エンハンサーRNAの転写と標的遺伝子の活性化の両方が起こるが、ネットワークに連結しない変異体ではこれらは起こらない。従ってこれらの知見から、意外にも標的遺伝子を調節するエンハンサー領域がホメオドメイン因子/β-カテニン/Satb1に依存して、ある核内構造体に局在化し、それがエンハンサーに結合したホメオドメイン因子が発生遺伝子の転写プログラムを効率良く活性化するための基本機構になっていることが明らかになった。

