分光学:信号反転キャビティーリングダウン旋光測定法によるエバネッセント波および大気中キラルセンシング
Nature 514, 7520 doi: 10.1038/nature13680
キラリティーの検出と定量化は、分析化学や生化学から薬理学や基礎物理学までさまざまな分野において重要であり、薬物の設計や合成、タンパク質の構造決定、弱い力のパリティ対称性の破れの検出に役立つ可能性がある。キラリティー決定法の最近の進展には、マイクロ波、フェムト秒パルス、スーパーキラル光、光イオン化を用いたものがあるが、最も広く用いられている方法は、いまだに円二色性や旋光性を測定する従来の方法である。しかし、こうした信号は概して、時間に依存する大きなバックグラウンドに対して極めて弱い。共振器増強型の光学的手法を用いると、弱い信号を光共振器に繰り返し通すことによって信号を増幅でき、2枚のミラーからなる共振器を用いて最高で105回の共振器通過を実現することによって、記録的な感度で吸収と複屈折の測定が可能になった。しかし、キラル信号は共振器を往復すると打ち消されるのに対し、普遍的な偽の直線複屈折バックグラウンドは強くなる。共振器内の光学素子でこの問題を解決した場合でさえ、絶対キラリティーの測定は依然として困難であり、不可能なこともある。今回我々は、対向伝搬ビームを用いるパルスレーザー・ボウタイ型キャビティーリングダウン旋光計を利用して、共振器通過回数(概して103より大きい)に等しい倍率で増幅させ、大きな共振器内誘起ファラデー回転によって直線複屈折の影響を抑え、さらに、ファラデー回転を反転させ対向伝搬ビームから信号を差し引くことによって高速で信号を反転させている。これらの特徴によって、バックグラウンドを除去できない環境において絶対キラル信号の測定が可能になる。我々は、大気中のα-ピネン蒸気から、またプリズム表面での全反射によって生成したエバネッセント波中のマルトデキストリン溶液とフルクトース溶液から旋光度を決定している。この旋光計の限界は、安定な高フィネス共振器にロックした連続波レーザーを用いた場合、直線複屈折測定の感度に匹敵するはずであり(3 × 10−13ラジアン)、これは、現行のキラル検出限界よりも数桁感度が高いものである。これにより、多くの分野でキラルセンシングが一変すると予想される。

