細胞:神経栄養因子受容体RETは造血幹細胞の生存と機能を駆動する
Nature 514, 7520 doi: 10.1038/nature13498
造血は、健常時、また疾患罹患時に、全血液細胞系譜を作り出す発生カスケードである。この過程は、生理的要求が生じた際に、分化、自己複製および増殖が可能になる静止状態の造血幹細胞に依存して起こる。しかし、造血幹細胞の恒常性および機能を調節する機構はほとんど分かっていない。本論文では、神経栄養因子受容体RET(rearranged during transfection)が、造血幹細胞の生存、増殖および機能を駆動することを示す。造血幹細胞はRETを発現しており、またその結合相手分子である神経栄養因子は造血幹細胞の環境で産生されることが分かった。Retの除去により、造血幹細胞(正常な分化能を持つが、細胞自律的なストレス応答や再構築能は消失)の生存が低下し、数が減少する。意外にも、RETシグナルは、造血幹細胞に、p38マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼおよびサイクリックAMP応答配列結合(CREB)タンパク質活性化の下流で働く、重要な生存の合図であるBcl2およびBcl2l1を供給する。それゆえ、RETの下流の標的であるBcl2あるいはBcl2l1の強制発現のみで、in vivoでのRetヌル前駆細胞の活性の回復に十分である。RETの活性化は、造血幹細胞の生存、増殖およびin vivoでの移植効率の改善を引き起こす。特に、ヒト臍帯血前駆細胞の増殖および移植も、神経栄養因子によって改善されることは重要で、これによりヒト造血幹細胞移植におけるRETアゴニスト探究の道が開かれる。我々の研究は、神経栄養因子が造血幹細胞微小環境の新規構成要素であることを示しており、これによって造血幹細胞とニューロンが同種のシグナルによって調節されることが明らかになった。

