がん:頭蓋内胚細胞腫における新規の体細胞変異と生殖細胞系列変異
Nature 511, 7508 doi: 10.1038/nature13296
頭蓋内胚細胞腫(IGCT)は、まれに見られる異質な脳腫瘍の一群であり、生殖腺に発生するより一般的な胚細胞腫に臨床的にも組織学的にも類似している。IGCTは、地理的および性別分布、組織学的構成、治療結果に大きなばらつきがある。IGCTの発症は歴史的に、欧米諸国に比べて日本や他の東アジアの国々で5~8倍多く、思春期付近に発症のピークがある。この腫瘍の約半分は松果体領域で見られる。患者の男女比は、全体ではおよそ3~4:1であり、松果体で見られるものは、さらにその比が大きくなる。研究に利用できる腫瘍標本が少ないため、この希少疾病については今のところあまり分かっていない。本研究では、次世代塩基配列解読、一塩基多型アレイ、遺伝子発現アレイを用いて行った62症例の解析について報告する。我々はIGCTの50%以上でKIT/RASシグナル伝達経路に変異があることを見いだし、その中にはKITやその下流仲介因子であるKRASとNRAS、またKITの負の制御因子であるCBLの新規の頻発性体細胞変異などが含まれていた。AKT/mTOR経路の新規体細胞変異については、19%の患者で見られた、AKT1の発現上昇につながる14q32.33にあるAKT1遺伝子座のコピー数増加が含まれる。我々は、転写コリプレッサーであり腫瘍抑制因子であるBCORL1の機能欠失変異を同定した。さらに、日本人のIGCT患者では、JMJD1Cに新規のまれな生殖細胞系列変異が有意に多く存在していることを報告する。JMJD1Cはヒストンデメチラーゼをコードし、アンドロゲン受容体のコアクチベーターである。本研究は、IGCTの生物学的特性を理解する上での分子基盤を明らかにし、KIT/RASの活性抑制とAKT/mTOR経路に焦点を合わせるという有望な治療戦略の候補となることを示している。

