構造生物学:モジュール型ポリケチド合成酵素で触媒反応サイクル中に起こる構造再編成
Nature 510, 7506 doi: 10.1038/nature13409
ポリケチド合成酵素(PKS)というメガ酵素の生産ラインでは、生物活性を持つさまざまな天然物がモジュール構造を使って合成される。その中には臨床使用が認可されている多数の治療薬の中核構造となるものや、治療薬本体であるものが含まれる。放線菌目の細菌であるStreptomyces venezuelaeのピクロマイシン合成経路由来の完全長PKSモジュールの構造では、モジュール内アシルキャリヤータンパク質(ACP)のために反応小室が形成され、ACPドメインがアシルトランスフェラーゼ、ケトシンターゼ、ケトレダクターゼの活性部位間で、構成要素と中間体を運搬する(p.512を参照)。今回我々は、触媒サイクル中の生化学的に重要な3つの状態にある、完全長ピクロマイシンPKSモジュールの低温電子顕微鏡構造を決定した。それぞれの生化学的状態は、ボトムアップ液体クロマトグラフィー/フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析によって確認された。ACPドメインは、ポリケチド鎖基質のケトシンターゼ活性部位への誘導後、β-ケト中間体の伸長後、β-ヒドロキシ産物の生成後で、それぞれ異なる位置に正確に配置されている。これらの構造から、ACPが反応小室中で触媒ドメインと次々に相互作用する際、また伸長しプロセシングを受けたポリケチド基質をPKS経路の次のモジュールへと渡す際の動態が明らかになった。酵素反応サイクルの間に、ケトレダクターゼドメインでは大規模なコンホメーション再編成が起こり、それによってACPに結合したポリケチド鎖伸長中間体が還元処理に最適な位置を占めるようになる。これらの知見は、機能できるPKSモジュールの設計や薬理学的に有用な分子を生成する経路の構築に重要な意味を持つだろう。

