Letter

物理化学:水の分子モデルにおける準安定液体–液体転移

Nature 510, 7505 doi: 10.1038/nature13405

液体水の等温圧縮率、等圧熱容量、熱膨張率の大きさは、平衡凝固点未満に冷却すると急激に増加する。この異常挙動の分子的起源と包含する意味の理解を目指して、多くの実験的、理論的、計算的研究が行われてきた。さまざまな理論的シナリオが提唱されているが、その1つに、2形態の液体水が関与する一次相転移が存在し、それが深い過冷却状態にある臨界点で終わるとする仮説がある。この仮説に一致する実験的証拠もいくつかあるが、水の液体–液体転移の決定的証拠は今のところ得られていない。深く過冷却された水についての決定的な測定は、氷への結晶化が急速に起こるために、これまで阻まれてきたからだ(この問題は最近克服された)。従って、この領域の水の構造と挙動を探るにはコンピューターシミュレーションが極めて重要である。シミュレーションから、水モデルには液体–液体転移を示すものもあれば示さないものもあることが分かっている。しかし最近、液体–液体転移は解釈の誤りであり、水のあらゆる原子論的モデルにおいて実際は液体–結晶転移であると主張する研究がある。今回我々は、6つの先進的サンプリング法で自由エネルギー面を計算することによって、水のST2モデルにおける液体–液体転移を調べ、2つの準安定液体相と1つの安定結晶相が同じ深過冷却熱力学条件下で存在することと、2つの液体間の転移が一次転移の熱力学的基準を満たすことを明らかにした。我々は、低密度液体から立方晶氷までの熱力学的に可逆的な経路に沿って、水の配位殻とトポロジカルな環構造の再配列を追跡した。また、系が結晶化するのではなく、2つの液体相間で自由にゆらぐことも示した。これらの発見は、水のST2モデルにおいて液体–液体転移が起こることを示す明確な証拠となり、液体–液体転移が起こるには結晶化と緩和の時間スケールが大きく異なる必要があることを示している。

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