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生化学:代謝産物であるα-ケトグルタル酸は、ATPシンターゼとTORの阻害によって寿命を延ばす

Nature 510, 7505 doi: 10.1038/nature13264

代謝と加齢は密接に結び付いている。進化的に異なるさまざまな生物で、制限摂餌は自由摂餌に比べると一貫して寿命を延長し、加齢に関連した疾患の発症を遅らせることが分かっている。栄養が制限されるこれと同様な条件や、遺伝的あるいは薬理学的要因による栄養素代謝やエネルギー代謝の乱れにも寿命延長効果がある。最近、加齢過程を変化させる代謝産物がいくつか見つかっているが、変化の基盤となる分子機構はほとんど解明されていない。今回我々は、トリカルボン酸回路(クエン酸回路)の中間体であるα-ケトグルタル酸(α-KG)が線虫の一種であるCaenorhabditis elegans成体の寿命を延ばすことを明らかにする。DARTS(drug affinity responsive target stability)法と呼ばれる低分子標的同定法を使って、ATPシンターゼのβサブユニットがα-KGに結合する新規タンパク質であることが突き止められた。ATPシンターゼはミトコンドリア電子伝達系の複合体Vとも呼ばれ、細胞の主要なエネルギー生産装置であり、進化の過程を通じて高度に保存されている。ミトコンドリア機能の完全な喪失は有害だが、電子伝達系を部分的に抑制すると、C. elegansの寿命が延びることはすでに知られている。我々は、α-KGがATPシンターゼを阻害することを明らかにし、このα-KGによる阻害が、ATPシンターゼのノックダウンと同様に、ATP含量と酸素消費を減少させ、オートファジーを増加させることをC. elegansと哺乳類細胞の両方で示す。α-KGによる寿命延長はATPシンターゼのβサブユニットを必要とし、下流のTOR(target of rapamycin)に依存することの証拠が得られた。飢餓時には内在性α-KG量が増加し、また食餌が制限されている動物ではα-KGによる寿命延長が起こらない。これは食餌制限による寿命延長について重要な代謝産物の1つがα-KGであることを示している。これらの解析によって、生物の寿命の調節に、一般的な代謝産物、細胞に一般的に見られるエネルギー生産装置と食餌制限の間に、これまで知られていなかった分子レベルの関連があることが明らかになり、これらの結果は加齢と加齢関連疾患の予防、治療の新たな戦略を示唆している。

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