化学生物学:2-チオ糖生合成における一次代謝経路からの硫黄担体タンパク質の借用
Nature 510, 7505 doi: 10.1038/nature13256
硫黄は生命に必須の元素であり、生物系にあまねく存在する。しかし、多くの硫黄含有二次代謝産物で、硫黄原子が組み込まれる仕組みはほとんど分かっていない。一次代謝産物中の炭素と硫黄の結合形成では、硫黄担体(供与体)タンパク質のペルスルフィド基やチオカルボキシレート基が、イオン性硫黄の主要な供給源となっている。これらの官能基はそれぞれ、特異的な活性化酵素の作用により翻訳後に生成される。これまでに報告された全ての細菌で、炭素–硫黄結合の形成反応を触媒する酵素をコードする遺伝子と、同族の硫黄担体タンパク質をコードする遺伝子は、同じ遺伝子クラスターに存在している。我々は、放線菌の一種であるAmycolatopsis orientalis由来の抗生物質BE-7585A中の2-チオ糖部分の生成を調べるために、2-チオグルコース合成酵素と推定されるタンパク質BexXを同定した。BexXのアミノ酸配列や作用様式は、チアミン生合成でのチアゾール形成を触媒する酵素ThiGに似ているらしいが、BE-7585Aクラスター中に硫黄担体タンパク質をコードする遺伝子は認められなかった。次いで行ったA. orientalisのゲノム塩基配列解読で、一次代謝産物の生合成に関与すると考えられる硫黄担体タンパク質をコードする遺伝子が数個見つかったが、活性化酵素の遺伝子は1つしか見つからなかった。さらなる実験から、この活性化酵素がこれらの硫黄担体タンパク質のそれぞれをアデニル化でき、その後のチオール化反応も、おそらくそのロダネーゼドメインを介して触媒することが示された。これらの硫黄送達系を適切に組み合わせることで、BexXが触媒する2-チオグルコース生成が実現すると考えられる。硫黄担体タンパク質を選択的に識別するBexXの能力の構造的基盤は、X線結晶学によって得られた。この研究は、我々が知るかぎり、自然界におけるチオ糖形成の初めての完全な特徴解析であり、また、A. orientalisの硫黄送達系では受容体が特定されていないことを実証している。我々の結果はまた、硫黄含有天然物の生合成のために一次代謝の硫黄送達装置を借用することが、おそらく自然界に見られる一般的な戦略であることも示している。

