生物多様性:農業景観における生物多様性の変化の予測と多様性崩壊の回避
Nature 509, 7499 doi: 10.1038/nature13139
島の生物地理学の平衡理論は、絶滅速度を見積もるための基盤となっており、保全科学の柱の1つでもある。生物多様性を保全するための標準的な戦略は自然保護区の設定であり、そうした保護区は、人間活動が著しく生物の生息には適さない「海」に浮かぶ「島」として扱われる。保全の理論および実践に対する島の影響は大きいが、大陸における島の類似構造、つまりヒトが優占する景観内にある分断された森林域は、島の生物地理学の理論に基づいて予想される生物多様性パターンとは一貫して一致しない。里地里山の生物地理学はまた別の枠組みであり、全球の野生生物の運命は主として農業生態系または里地里山生態系の受容性によって決まることが認められている。今回我々は、これらの生物地理学的理論を直接検証するために、新熱帯区の里地里山生態系を近傍の島の生態系と比較し、それぞれが根本的に異なる方式でコウモリの類似した生物多様性を支えていることを示す。島の生態系は、コウモリ種消失という島の生物地理学からの予測と一致しており、この場合、水に覆われた場所は生息地とはならない。対照的に、里地里山生態系では、全ての森林保護区やそれより小規模の分断化した森林域にわたって、種の豊かさおよび均一性が高くなっている。森林保護区や分断化した森林域に比べると、森林が伐採された里地里山の生息地は、種数は少ないが同等に均一なコウモリ群集の存在を支えている。また、森林が伐採された生息地に関連するコウモリ群集は構成が全く新規で、これは人工的な生息地を利用する多くの種による予測可能な個体数変化のためである。さらに我々は、コウモリの複数の生物地理学的研究を対象に、700を超える種について全球規模のメタ分析を行った。その分析結果は我々の知見を一般化したものとなり、里地里山の生態系と島の生態系には別々の生物地理学的理論が必要であることを示している。里地里山の生物地理学の理論は、地球の全陸地面積のほぼ半分を占め、さらに拡大することが見込まれている農業生態系の保全戦略を立てるのに不可欠である。

