地球物理学:月を形成した衝突に対する時計としての地球マントルの高親鉄性元素
Nature 508, 7494 doi: 10.1038/nature13172
一般的に受け入れられているシナリオでは、地球への最後の巨大隕石衝突によって月が形成され、地球のマントルが融解して核形成の最終段階が始まったとされている。地球化学の重要な目的の1つはこの事象の年代を決定することであるが、異なる年代が提案されてきた。月を形成した事象が起きたのは、太陽系内で最初の固体が凝縮した時期の約3000万年(30 Myr)後という初期であると主張する研究もあれば、その年代は凝縮後50 Myr以降(おそらく約100 Myr後)であると主張する研究もある。本論文では、月を形成した事象の年代が凝縮後40 Myrよりも前である可能性を99.9%の信頼水準で排除できることを示す。多数のN体シミュレーションを用いて、地球に似た惑星に対する最後の巨大種突の時期と、その後後期集積期と呼ばれる時期に付加された総質量の間の関連性が立証された。最後の巨大衝突の時期が遅くなるにつれて、後期集積期に付加された質量は予測可能な形で減少する。この関連性は、地球型惑星形成の古典的シナリオとグランドタック・シナリオ両方の範囲内で存在し、円盤の広範な条件に対して成立する。地球マントル中の高親鉄性の元素(HSE)の濃度は、後期集積期に地球に付加したコンドライト物質の質量に対して制約条件を与える。HSE存在度の測定結果を用いて、月の形成年代は凝縮後95±32 Myrと決定された。後に衝突した物体が分化して地球マントル中の不完全なHSEの記録として残った可能性は存在する。このような場合でも、さまざまな同位体による制約条件から、後期に集積した質量は地球質量の1%を超えないことが強く示唆されており、月を形成した事象が起きた時期は凝縮後40 Myr よりもかなり後であると、HSE時計によってまだ確実に限定される。

