がん:グルコース制限とビグアナイドに対するがん細胞の感受性を決定する代謝因子
Nature 508, 7494 doi: 10.1038/nature13110
腫瘍内部では、大量に消費される栄養素、特にグルコースの濃度が正常組織に比べて一般に低くなっているため、がん細胞はその代謝を腫瘍微小環境に適応させる必要がある。この適応についてもっと詳しい解明が進めば、がん細胞の持つ傾向が明らかになり、それを治療に利用できる可能性がある。今回我々は、低栄養培地で細胞増殖を長期間にわたって維持できる連続流動培養装置(Nutrostatと命名)を開発し、これを使って、プールしてあったバーコード化がん細胞系列を低グルコース条件で培養し、競合的増殖解析を行った。低グルコースに対する感受性は細胞系列によってさまざまに異なり、RNA干渉(RNAi)スクリーニングによって、低グルコース条件での増殖最適化に必要な主要な経路は、ミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)であることが突き止められた。低グルコースに最も感受性の高い細胞系列群は、本来ならばグルコース制限によって起こるはずのOXPHOSの上方調節が障害されていて、それはミトコンドリアDNA(mtDNA)の複合体I遺伝子に起こった変異か、グルコース利用障害のためであることが分かった。この上方調節の欠陥から、低グルコース条件で培養したがん細胞、あるいは腫瘍異種移植片は、OXPHOSを阻害する抗糖尿病薬ビグアナイドに対する感受性を持つことが予想される。注目すべきことに、mtDNAの変異を持つがん細胞では、複合体Iの機能を迂回できるようになるユビキノン酸化還元酵素である酵母NDI1を異所発現させると、ビグアナイド感受性が元に戻る。従って、mtDNAの変異とグルコース利用の障害は、OXPHOS阻害剤に対する感受性の高い腫瘍を見つけだすためのバイオマーカー候補となると考えられる。

