細胞:ヒト繊維芽細胞から作製した肝細胞によるマウス肝臓の再生
Nature 508, 7494 doi: 10.1038/nature13020
ヒトの誘導多能性幹細胞(iPSC)は、自家細胞治療や疾患モデル化のための肝細胞の供給源となることで、肝疾患の研究および治療に大変革をもたらす可能性を持つ。しかし、in vitroでのiPSCの肝細胞への分化(iPSC-Hep)促進に進歩が見られるにもかかわらず、ヒトの初代培養成体肝細胞(aHep)が持つin vivoで大量に増殖する能力を再現する細胞は報告されていない。このような細胞が得られていないことが、マウスでヒト肝疾患を再現する取り組みの障害となっており、肝臓の細胞治療にiPSC-Hepが果たして使えるのかという疑問につながっている。なぜなら、患者の体内で治療効果のある肝臓細胞質量を確立して、それを維持するためには、移植後に大量の細胞増殖が必要であることがaHep移植の臨床試験で分かっているからである。本論文では、この問題の解決策として、マウス肝臓を再生できるヒト繊維芽細胞由来の肝細胞の作製について報告する。ヒト繊維芽細胞から肝細胞を得る現在のプロトコルとは異なり、我々の方法ではiPSCを作製せずに、万能性(pluripotent)への再プログラム化を中断させて、分化能が限定される誘導多能性前駆細胞(iMPC;induced multipotent progenitor cell)状態を作り出し、そこから内胚葉前駆細胞、次に肝細胞(iMPC-Hep)を効率的に分化させることができた。これを行うために、我々は、増殖を低下させることなく、内胚葉および肝細胞への分化を補助する複数の低分子を明らかにした。ヒト肝不全の免疫不全マウスモデルへの移植後、iMPC-Hepは大量に増殖し、aHepと同程度の肝細胞機能を獲得した。非分画iMPC-Hepは腫瘍を形成しなかったが、これは万能性状態にまで到達していないためである可能性が非常に高い。我々の結果は、in vitroで作製されたヒト肝細胞によってマウス肝臓を顕著に再生させることの実現可能性を示しており、肝臓の自家細胞治療を長年阻んできた障害を取り除くものとなるだろう。

