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構造生物学:分子レベルで詳細に明らかにされたTc毒素の作用機構

Nature 508, 7494 doi: 10.1038/nature13015

病原性細菌のTc毒素は三者複合体で、宿主の細胞膜に穴を開け、毒性のある酵素をヒトなどの宿主の細胞内に送り込む。その基盤となる機構は複雑だが、ほとんど解明されていない。本論文では、小孔形成前の状態、および小孔を形成した状態にあるTcAサブユニットと、1.7メガダルトンの完全なTc複合体の高分解能構造を、我々が知るかぎりで初めて報告する。その構造から、TcAは、移行チャネルに加えて、宿主特異性に重要な4つの受容体結合部位とノイラミニダーゼ様領域を形成していることが明らかになった。外殻はpH変化に誘導されて開き、エントロピー弾性を持つ「バネ」が放出され、これが細胞膜へのTcAチャネルの挿入を駆動する。TcB/TcCのTcAへの結合により、6枚の羽根を持つβプロペラにより形成されたゲートが開き、膜を貫通するタンパク質移行チャネルが作られる。このチャネルの構造と性質から、タンパク質の折りたたみがほどけて移行が起こる新規な様式が考えられる。我々の結果により、Tc毒素が関わる感染の重要な複数段階を分子レベルで解明することが可能になった。

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