Letter

分子物理学:ヘリウムバッファーガスによるクーロン結晶化分子イオンの高効率回転冷却

Nature 508, 7494 doi: 10.1038/nature12996

低温分子の生成は、基礎物理研究、複雑な分子の高分解能分光、低温化学、宇宙化学など、多くの状況において非常に重要である。汎用的で広く用いられている分子冷却法の1つとして、超音速ビーム膨張や極低温トラップ環境におけるヘリウムバッファーガス冷却がある。トラップされた分子イオンに適用できる別のさらに最近の冷却法は、共同並進冷却を用いるもので、共にトラップされレーザー冷却された原子イオンとの衝突相互作用を通して、クーロン結晶と呼ばれる空間的秩序構造へと冷却する方法であって、レーザー制御された内部状態生成と組み合わされる。今回我々は、MgH+分子イオンの回転自由度のヘリウムバッファーガス冷却に関する実験結果を提示する。この分子イオンは、極低温線形RF四重極トラップ内にトラップされ共同冷却された。我々は、毎秒わずか10回程度のヘリウム衝突頻度、すなわち一般的なバッファーガス冷却装置で行うよりも4~5桁低い頻度で、単一分子イオンを回転温度7.5+0.9−0.7 Kまで冷却した。この値は、これまでそのような温度として測定されたものの中で最低である。加えて、より大きいクーロン結晶の形状とそうした結晶内の原子イオンおよび分子イオンの数のどちらか、あるいは両方を変えて、イオンの並進マイクロ運動エネルギーを変えることにより、有効回転温度を約7 Kから約60 Kまで調節した。ヘリウム衝突頻度が極端に低いことから、単一分子イオンの共同サイドバンド冷却が可能になるかもしれない。また、最終的には、バッファーガス冷却された分子イオンの量子論理分光が実現可能になるかもしれない。さらに、今回の冷却方式を複雑な分子イオンに応用することによって、生物学的に興味深い個々の分子の単一状態または少数状態の操作が可能になるはずである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度