Letter

神経科学:視覚空間は眼球運動前に前前頭皮質で圧縮される

Nature 507, 7493 doi: 10.1038/nature13149

我々は一連の急速眼球運動(サッケード)によって外界を見ており、眼球運動の都度、注視の方向を移動させて関心視対象を中心窩にもっていき、以後の処理を進める。このような眼球運動によって網膜上の像は高頻度にかなりずれるが、こうしたずれは気付かれない。この見かけの安定性の基盤となる主たる機構は、眼球運動開始前に、視覚受容野(RF)を急速眼球運動前の場所から運動後の場所へと予測的に移動することだと広く考えられている。こうした視覚RFの予測的「再マッピング」が、注視制御に関わる脳領域内で特に顕著であるという証拠はある。しかし、その証拠の中に、眼球運動開始前の視覚RFを詳細に測定した例はない。今回、再マッピング中ではなく、サッケード準備中前前頭野の注視制御領域ニューロンのRFが、サッケードの視対象に向かって甚だしく収斂することが分かった。サルで多点電極記録を用い、静止時注視の際と眼球運動直前に、前前頭野ニューロンの視覚RFをマッピングした。最初の注視点から次の視対象へ向けての眼球運動では、RFは網膜中心空間で動かなかった。しかし、眼球運動開始直前時に、RFは視角にして18°も移動し、視対象の位置に向けて収斂した。この収斂によって、視対象近傍の刺激に応答するRFの割合は3倍に増加した。また、ヒト被験者と同様に、前前頭野ニューロン集団は、サッケード前の刺激を実際より視対象に近いものと著しく誤認した。今回の結果から、RFの移動は、サッケードに伴う網膜像のずれを予測したものではなく、眼球運動中の視対象空間の優先的認識を反映したものであることが分かる。

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