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神経科学:ビデオゲームによる訓練は高齢者の認知制御能力を高める

Nature 501, 7465 doi: 10.1038/nature12486

認知制御とは、ヒトが目標達成に向けて複雑な環境と相互作用することを可能にする一連の神経過程と定義される。複数の目標を同時に達成しようとする際(多重課題行動)にはいつも、ヒトはこのような認知制御過程に対処することを強いられ、その結果、基本的な情報処理能力の制限に起因する干渉が生じる。テクノロジーが氾濫する現代社会では、多重課題行動があらゆる所で見られるようになっていることは明らかであり、高齢化が進むヒト集団における多重課題行動の難しさと認知制御能力の低下については多くの証拠が集まっている。本論文では、特別に設計した三次元ビデオゲーム(ニューロレーサー)によって評価される多重課題実行の成績が、20〜79歳の年齢に関連して直線的に低下することを示す。多重課題訓練モードに適合させたニューロレーサーを実行することで、60〜85歳の高齢者の多重課題処理時におけるコストは、単課題対照群と無課題対照群のどちらよりも低く、20歳の未訓練被験者のレベルを超えるところにまで達し、この改善は6か月間持続した。また、脳波により測定された加齢による認知制御神経指標の低下は、多重課題訓練によって改善した(前頭正中部のθ波パワーと前頭後部のθ波コヒーレンスが増大した)。重要なことに、この訓練による成績向上は訓練していない他の認知制御能力(注意の持続や作業記憶の改善)にも及び、前頭正中部のθ波パワーの増大から、訓練による注意の持続と6か月後までの多課題遂行能力の向上維持が予測される。今回の知見は、高齢者の脳の前前頭野の認知制御系にはロバストな可塑性があることをはっきり示しており、特別に設計したビデオゲームが、若者から高齢者までの認知能力の評価や、その基盤となる神経機構の検討に使用でき、また認知能力強化の有効な手段となることを示した、我々の知るかぎりで最初の証拠である。

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