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生物物理:K+チャネルの不活性化からの遅い回復は水分子により制御される
Nature 501, 7465 doi: 10.1038/nature12395
K+チャネルの細胞内ゲートは特異的な刺激を受けると開口し(活性化)、一過性にイオンを透過させる。この状態は、選択性フィルターが自発的にコンホメーション変化を起こして非透過状態に向かう(不活性化)まで続く。刺激を取り除くとゲートは閉じ、選択性フィルターが再び透過型のコンホメーションに戻ること(回復)が可能となる。透過型フィルターと不活性化型フィルターの構造的な違いは極めて小さいことを考えると、回復過程に数秒もの時間がかかることがある理由は不明である。Streptomyces lividans由来の細菌K+チャネルKcsAを用いることは、チャネルの不活性化と回復に関する疑問を原子レベルで解決する助けとなる。KcsAは電位感知装置がなくポアドメインだけからなるが、イオンの透過、活性化、不活性化に必要な構造要素は持っている。今回我々は、一連の長時間分子動力学シミュレーションを用いて、選択性フィルターの裏側に結合して埋め込まれた水分子により、選択性フィルターが不活性化型のコンホメーションに立体的に固定される仕組みを明らかにする。平均力ポテンシャルの計算によって、埋め込まれた水分子と細胞外K+イオン再結合が回復過程に影響を及ぼす仕組みが示される。シミュレーションから推測される動態モデルにより、埋め込まれた水分子の放出が回復の時間スケールを数秒まで引き延ばす機構が示される。この結果から、高浸透圧ストレスを加えることで、埋め込まれた水分子の占有を減少させると、回復速度が加速されるはずだと予想される。この予想は、2モル濃度のショ糖の存在下で回復速度を測定することにより実験的に確かめられた。

