Letter
応用物理学:生細胞におけるナノメートルスケールでの温度測定
Nature 500, 7460 doi: 10.1038/nature12373
ナノメートルスケールでの温度変化を高感度でプロ―ビングすることは、現代科学技術の多くの分野において大きな課題である。特に、広い温度範囲にわたって1度未満の温度分解能を持ち、しかも生物系に組み込める温度計があれば、生物・物理・化学研究の多くの分野における新しい強力なツールとなるだろう。その可能性は、温度による遺伝子発現や腫瘍代謝の制御から、細胞選択的な疾患治療や集積回路における熱放散の研究まで多岐にわたる。また、局所的な光誘起熱源と高感度ナノスケール温度測定を組み合わせることによって、細胞より小さいレベルで生物学的過程の操作も可能になるかもしれない。今回我々は、ダイヤモンドの窒素空孔色中心が持つ電子スピンのコヒーレント操作を利用した新しいナノスケール温度測定法を実証している。我々の手法により、超高純度バルクダイヤモンド試料において1.8 mK(感度9 mK Hz−1/2)という微小な温度変化を検出できた。また、ダイヤモンドナノ結晶(ナノダイヤモンド)の窒素空孔中心を利用して、200 nmという短い長さスケールで局所的熱環境を直接測定した。最後に、ナノダイヤモンドと金ナノ粒子を1個のヒト胚性繊維芽細胞に導入することによって、細胞より小さいレベルで温度勾配の制御とマッピングを実証した。これにより、生命科学における特異な潜在的応用が実現可能になる。

