Letter
医学:チフス菌のA2B5キメラ型毒素の構造と機能
Nature 499, 7458 doi: 10.1038/nature12377
チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi;S. Typhi)は、腸チフスとして知られる致命的な全身性感染症を引き起こす点で、他のほとんどのサルモネラ菌とは異なっている。この独特の臨床症状の分子基盤は解明されていない。我々は、チフス菌独自の毒性因子であるチフス菌毒素の全身投与が、動物モデルで腸チフスの急性症状の多くを再現することを見いだした。また、細胞表面の特定の糖タンパク質の特異的な糖鎖が、チフス菌毒素の受容体となることを突き止めた。これはチフス菌毒素の細胞標的特異性が広範囲にわたることの説明になる。さらに、チフス菌毒素の原子構造を明らかにした。これによって、チフス菌毒素は、共有結合した2個のAサブユニットが、五量体を形成したBサブユニットに非共有結合によって連結するという、前例のないA2B5構造であることが分かった。この構造は、毒素の受容体結合特異性や送達機構についての手がかりを与え、また2種類の強力な毒素活性がどのようにして単一の独特な毒素中に取り込まれ、腸チフスの特徴となる症状の多くを誘導できるのか、その仕組みを明らかにしている。これらの知見は、救命可能な腸チフス治療法の開発につながるかもしれない。

