Letter
生物無機化学:ハロゲナーゼSyrB2の触媒サイクルにおけるFe(IV)=O中間体の解明
Nature 499, 7458 doi: 10.1038/nature12304
単核非ヘム鉄(NHFe)酵素は、ハロゲン化、ヒドロキシル化、閉環、不飽和化、芳香環開裂反応など、さまざまな酸化反応を触媒する。また、フェニルアラニン代謝、神経伝達物質の産生、低酸素応答、二次代謝産物の生合成など、多くの生物学的過程に関与している。ハロゲナーゼSyrB2(シリンゴマイシン生合成酵素2)をはじめとする多くのNHFe酵素において、触媒サイクルにおける反応中間体として、高スピンS = 2 Fe(IV)=O種が捕捉されている。このFe(IV)=O中間体の反応性を理解するために計算機による研究が行われているが、幾何構造や電子構造に関する実験的知見が乏しいため、適用範囲は限られている。シンクロトロン放射光を用いた核共鳴振動分光法(NRVS)は、Feが関わる振動モードがFe(IV)=O活性部位の性質に強く依存するため、高感度で効果的な方法である。今回我々は、NHFe酵素の1つ、Pseudomonas syringae pv. syringaeという細菌から得たハロゲナーゼSyrB2における、Fe(IV)=O反応中間体のNRVSによる構造評価について報告する。この中間体による反応は、水素原子引き抜きで始まり、その後、天然基質の場合はハロゲン化、非天然基質の場合はヒドロキシル化が起こる。NRVSの実験データと電子構造の計算結果を照らし合わせることで、基質がFe(IV)=O中間体の配向を決めることが明らかになり、選択的ハロゲン化または選択的ヒドロキシル化のそれぞれを活性化し得るフロンティア分子軌道を特定できた。

