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物理化学:電荷非局在化をもたらす分子運動を超高輝度電子線でマッピングする
Nature 496, 7445 doi: 10.1038/nature12044
現在、超高速過程の研究は、構造のプローブ手段としてフェムト秒パルス電子線や硬X線を用いることにより、回折法の原子レベル空間分解能とフェムト秒分光法の時間分解能で行うことができる。しかし、弱い散乱中心を持ち、熱的に不安定であり、熱伝導性が悪い有機物質にこれらの方法を適用するのは難しい。つまり、有機物質のこれらの性質から、レーザー励起による熱の蓄積によって試料が劣化したり構造ダイナミクスがわからなくなったりしてしまう前に質の高い回折データが得られるように、電子線源には非常に高い輝度が要求される。今回我々は、最近開発された超高輝度フェムト秒電子線源を用いることによって、有機塩(EDO-TTF)2PF6が光誘起絶縁体–金属相転移を起こす際の分子運動が観測できることを示した。我々は、超高速レーザーによる励起後、遅延時間をおいて回折パターンの記録を行った。このパターンから何百というブラッグ反射を特定でき、それにより系の構造変化をマッピングできる。得られたデータと補助的なモデル計算によって、電荷非局在化の初期段階(5ピコ秒未満)において過渡的中間体構造が形成されることが示された。また、中間体形成を駆動する分子運動は、系の熱的緩和により100ピコ秒の時間スケールで金属状態に変化する分子運動とは異なることも明らかになった。これらの研究成果は、化学や生物学における不安定な系の構造ダイナミクスを支配する初期過程を、原子分解能で調べるのに、超高輝度フェムト秒電子線源が有望であることを示すものである。

