神経科学:さまざまな動機付け状態に関わる異なる扁桃体延長領域回路
Nature 496, 7444 doi: 10.1038/nature12041
嗜癖やうつといった病気に、不安と報酬処理の機能不全が併存して見られることは、これらの全く異なる神経精神症状に共通の神経回路が関与していることを示唆している。分界条床核(BNST)を含む扁桃体延長領域(extended amygdala)はおそれや不安を調節するが、報酬や嫌悪に関わるとされている領域である腹側被蓋野(VTA)にも投射することから、多様な情動状態を統合する神経基質の候補と考えられる。しかし、BNSTの異なる投射ニューロンとVTAにおけるそのシナプス後標的ニューロンとの正確な機能的接続性についても、この回路が動機付け状態の制御に果たす役割についても、まだ解明はなされていない。今回我々は、自由行動下のマウスで、遺伝学的、神経化学的に同定したVTAに投射するBNSTニューロンの活動を記録、操作する。総合すると、嫌悪刺激への曝露は、VTAに投射するBNSTニューロンに不均一な発火パターンを引き起こした。これに対し、in vivoで光学的に同定したグルタミン酸作動性投射ニューロンでは、嫌悪刺激に対し活動の正味の亢進が見られたが、同定されたGABA作動性(γ-アミノ酪酸含有)投射ニューロンの発火頻度は抑制された。チャネルロドプシン2を用いる回路マッピングにより、BNSTのグルタミン酸作動性投射ニューロン、GABA作動性投射ニューロンは共に、選択的に非ドーパミン作動性のシナプス後VTAニューロンを神経支配するため、in vivoでの回路の変動の機構的枠組みになることが明らかになった。BNSTのグルタミン酸作動性投射ニューロンをin vivoで光刺激すると、嫌悪行動と不安惹起性行動という表現型が現れた。逆に、BNSTのGABA作動性投射ニューロンを活性化すると、報酬効果、抗不安効果が生じ、これはVTAのGABA作動性ニューロンの直接的阻害によって再現できた。これらのデータから、機能的に相反するBNSTからVTAへの回路は報酬と嫌悪による動機付け状態を調節しており、不適応行動を双方向的に正常化するための重要な回路ノードとして働いている可能性があることが明らかになる。

