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生化学:酵素が触媒する1,2-ホスホノ基転移のこれまでに例のない反応機構の研究
Nature 496, 7443 doi: 10.1038/nature11998
(S)-2-ヒドロキシプロピルホスホン酸((S)-2-HPP)エポキシダーゼ(HppE)は、単核非ヘム鉄依存性酵素で、臨床的に有用な抗生物質であるホスホマイシンの生合成の最終段階を触媒する。この種の酵素は一般に、基質ラジカル中間体の形成を介して進行する酸素化反応を触媒する。これに対してHppEは独特な脱水素反応を触媒し、(S)-2-HPPの第二級アルコールをホスホマイシンのエポキシド環へと変換する。今回我々は、HppEがこれとは別の(R)-1-HPPを基質として、生物では先例のない1,2-ホスホノ基転移を触媒することを明らかにする。(1R)-1-ヒドロキシル-2-アミノプロピルホスホン酸などのまた別の基質類似体での観察結果や、ラジカルを介した転移、カルボカチオンを介した転移のモデル反応に基づいて考えると、この変換にはカルボカチオン中間体が関わっているらしい。X線結晶解析により、基質の位置化学的、立体化学的性質に応じて異なった反応を触媒するというHppEの能力の構造基盤が明らかになった。これらの結果は、単核非ヘム鉄依存性酵素の触媒サイクルで、基質由来のカチオン中間体が形成されることを示す有力な証拠である。この特異なホスホノ基転移の基盤となる化学反応は、ホスホン酸を含む天然化合物をin vivoで構築する新しい仕組みを示しており、新しいホスホン酸誘導体の作成に使える可能性がある。

