構造生物学:電子伝達に関与するタンパク質–タンパク質複合体の構造
Nature 496, 7443 doi: 10.1038/nature11996
電子伝達反応は、ATPの生成につながる過程である酸化的リン酸化や光合成の基盤となっており、また中間代謝の多くの反応に関与しているため、生物に不可欠である。こうした役割に重要なのは、過渡的なタンパク質間電子伝達複合体の形成である。弱い結合によって作られるこのような過渡的複合体は、一般に結晶学的研究ではいまだに扱いにくく、結合相手となるパートナータンパク質間の特異性を制御するための構造基盤はわかっていない。脱窒は、酸素濃度が制限されている時に細菌が気体状の中間体である一酸化窒素(NO)と亜酸化窒素(N2O)を介して、硝酸塩または亜硝酸塩を窒素に還元する反応で、呼吸の代替形態と言えるが、脱窒の重要な反応段階全てで重要なのがタンパク質間電子伝達過程である。亜硝酸塩からN2Oの前駆体であるNOへの一電子還元は、ヘム、または銅を含む亜硝酸還元酵素(CuNiR)によって行われ、CuNiRが酸化還元パートナータンパク質であるクプレドキシンまたはc型シトクロムから1個の電子を受け取る。今回我々は、プロテオバクテリアに属するRalstonia pickettii由来の、新たに特定された3ドメインからなるヘム-c-Cu亜硝酸還元酵素(RpNiR)の1.01 Å分解能での構造と、そのM92AとP93A変異体の構造を報告する。分解能が非常に高いため、CuNiRの中核となるクプレドキシン三量体構造と、繋留されているシトクロムcドメインとの間の界面の原子レベルでの詳細が明らかになった。この系ではゲノム獲得により供与体タンパク質と受容体タンパク質が融合していて機能的に有利となっており、それによって酵素が効率のよい自己電子伝達系として機能することが可能になっている。RpNiRと、CuNiRと供与体タンパク質との二量体複合体であるAxNiR-cytc551との比較、および突然変異誘発研究から、電子伝達の際には水素結合した水分子が界面で重要であることの直接的な証拠が与えられた。この構造からはまた、還元による非活性化が起こって基質の結合が妨げられる他のCuNiRとは対照的に、RpNiRの活性部位では還元した銅イオンに亜硝酸塩が選択的に結合する理由の説明が得られる。

