生化学:対になったDNAポリメラーゼによる染色体複製の際にDNAのねじれを解消する方法
Nature 496, 7443 doi: 10.1038/nature11988
染色体複製装置には対になったDNAポリメラーゼが含まれ、それらがリーディング鎖とラギング鎖を同時に複製する。だが、このような連動型の複製で生じるトポロジー上の問題については、あまり認識されていない。合成の際にDNAポリメラーゼはらせん状に進んでいかなければならないが、リーディング鎖ポリメラーゼとラギング鎖ポリメラーゼが物理的に連結されているため、娘鎖どうしが絡まり合い、すなわち新たに合成されたDNAに負の超らせんが大量に生じることになる。このようなトポロジー上の難問があるにもかかわらず、DNAポリメラーゼが連動した複製の際に互いの結合を保持する仕組みについては解明されていない。今回我々は、大腸菌(Escherichia coli)のレプリソームの動態をアンサンブル法、単一分子法で調べ、レプリソームがこのトポロジー問題をトポイソメラーゼに依存することなく解決している可能性を明らかにした。ラギング鎖ポリメラーゼは、複製完了前に岡崎フラグメントからたびたび離れ、その後には一本鎖になったギャップが残る。しかしラギング鎖ポリメラーゼが離れるといっても、リーディング鎖ポリメラーゼと結合しているため、レプリソームから解離してしまうことはない。このような挙動は「シグナル解離(signal release)」と呼ばれ、伸長が完了していないDNA断片からポリメラーゼを引き離すには、タンパク質、おそらくはプライマーゼが必要と考えられていた。しかし観察の結果、シグナル解離はプライマーゼとは無関係であり、引き金となるタンパク質を全く必要としないらしいことがわかった。実際には、ラギング鎖ポリメラーゼが、レプリソームの中では連続反応性が低いというだけのことらしい。興味深いことに、ラギング鎖ポリメラーゼにプライマー付きのDNAを他から供給して複製フォークから外すと、高い連続反応性が回復する。つまり、ポリメラーゼが対を作っていると、おそらくは新たに合成されたDNAに超らせんによる張力が蓄積されるためにトポロジー変化が引き起こされ、それが原因で連続反応性が低下し、ラギング鎖ポリメラーゼが一時的にDNAから解離するのだろうと、我々は考えている。

