物理:強相関スピン電荷量子励起による磁性のフェムト秒スイッチング
Nature 496, 7443 doi: 10.1038/nature11934
現在の磁気メモリデバイスや論理デバイスのスイッチング速度の限界をギガヘルツ(109 Hz)からテラヘルツ(1012 Hz)領域へ押し上げる技術上の要請が、スピンエレクトロニクスの全分野や多機能集積デバイスの根底にある。この挑戦的な取り組みでは、コヒーレントなスピン操作に基づく全光磁気スイッチングが研究されている。分子状態の適切な重ね合わせを作ることで化学反応や生化学反応の光反応生成物に影響を与えることができるフェムト秒化学や光合成ダイナミクスと同様に、フェムト秒レーザーで励起した電子状態間のコヒーレンスによって、相関物質の競合する相の間の微妙な均衡を「瞬間的に」壊すことで、磁気秩序をスイッチングできる。応用に適した材料としては、例えば巨大磁気抵抗を示すマンガン酸化物が挙げられる。今回我々はPr0.7Ca0.3MnO3を用いて、反強磁性秩序から強磁性秩序へフェムト秒(10−15秒)で光誘起スイッチングが起こることを示す。我々は、光励起に対するしきい値挙動(これは光反射率には現れない)を持つ、温度依存の巨大な磁化が発生する過程を約120フェムト秒以内に観測した。フェムト秒レーザーパルス中において強磁性相関が発達したことから、しきい値挙動のない相分離を特徴とするピコ秒(10−12秒)の格子加熱領域とは別の、磁性の初期量子コヒーレント領域の存在が明らかになった。我々のシミュレーションは、非線形なフェムト秒スピン発生を再現するとともに、電子状態のコヒーレントな重ね合せが局所的な強磁性相関を引き起こすのと相関して、高速の量子スピンフリップゆらぎが発生することを証明した。これらの結果によって2つの分野が1つに融合する。すなわち、金属とバンド絶縁体におけるフェムト秒磁性の分野と、運動エネルギーを超える局所相互作用により競合する秩序間での複雑な均衡が生じる、強相関電子系における非平衡相転移の分野である。

