Letter

細胞:誘導多能性幹細胞あるいは胚性幹細胞に由来する終末分化した細胞には免疫原性がほとんど見られない

Nature 494, 7435 doi: 10.1038/nature11807

再生医療において胚性幹(ES)細胞の代わりに誘導多能性幹細胞(iPSC)を用いる利点は、ES細胞使用に伴う倫理問題やES細胞由来の組織の免疫拒絶の可能性を回避できることである。しかし、iPSCの部分的な再プログラム化や遺伝学的不安定性により、iPSC由来の分化細胞が移植される場合でさえも、移植レシピエントにおいて免疫応答が誘導される可能性がある。iPSCは、最初にin vitroで特定の細胞種に分化させ、その後、移植に供する。これまでもさまざまなiPSC由来分化組織を用いたモデル移植実験が行われており、免疫拒絶は観察されていないが、iPSC由来組織の免疫原性の慎重な調査は、特にこの問題が今まで行われたほとんどの研究の主題でなかったことからも、ますます重要になっている。最近の研究で、iPSC由来の奇形腫には免疫原性が見られたが、ES細胞由来の奇形腫には免疫原性が見られなかったことが報告され、また、いくつかの原因遺伝子の関連が示された。それにもかかわらず、これらの知見については、いくつかの論争が起こっている。本論文では、マウスiPSC由来の分化した皮膚および骨髄組織の免疫原性を検討した。iPSCとES細胞との最適な状態での比較を確実にするために、近交系マウス(C57BL/6)を用いて、再プログラム化に用いるベクターがゲノムに挿入されていないiPSC10株とES細胞7株を樹立した。iPSC由来の皮膚および骨髄細胞をES細胞由来のそれぞれの組織と比較した場合、移植成功率に差は認められなかった。そのうえ、iPSCあるいはES細胞のどちらに由来する組織に対しても免疫応答(T細胞の浸潤を含む)はほとんどあるいは全く観察されず、また、拒絶により退縮中の皮膚や奇形腫組織での免疫原性の原因とされるZg16およびHormad1遺伝子の発現上昇は見られなかった。我々の知見は、iPSCおよびES細胞から分化させた移植細胞が免疫原性をほとんど有していないことを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度