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医学:黒色腫は炎症誘導性の可逆的脱分化を介してT細胞療法に抵抗性を示す

Nature 490, 7420 doi: 10.1038/nature11538

メラノサイト抗原を標的とする細胞傷害性T細胞を用いる養子細胞移入療法(ACT)は、転移性黒色腫患者で寛解を達成できるが、腫瘍が再発することが多い。ACTに対する獲得抵抗性を説明する仮説としては、抗原を欠損する腫瘍細胞変異体の選択やT細胞寛容の誘導などが挙げられている。しかし、適切な実験用黒色腫モデルが今までなかったことが、抵抗性の原因となる機構についての明確な考察を妨げてきた。我々は、遺伝学的操作を施したマウス黒色腫モデルで有効なACT実施プログラムを確立し、患者で見られる腫瘍の退縮、寛解および再発を再現した。本論文では、炎症が誘導するメラノサイト抗原の可逆的喪失を介して、黒色腫がACT抵抗性を獲得するという意外な観察結果について報告する。連続移植実験で、黒色腫細胞はT細胞が引き起こす炎症刺激に応答して、分化表現型と脱分化表現型を切り替えることがわかった。炎症促進サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)-αが、マウスおよびヒトの黒色腫細胞の可逆的脱分化を直接引き起こす重要な因子であることが突き止められた。TNF-αに暴露された腫瘍細胞は、メラノサイト抗原特異的T細胞にほとんど認識されないが、非メラノサイト抗原特異的T細胞による認識は影響を受けないか、あるいは増加することさえあった。我々の結果は、炎症性微小環境にある黒色腫細胞の表現型の可塑性が、T細胞免疫療法の当初の成功後の腫瘍再発の一因であることを実証している。今回の結果に基づき、将来のACT実施プログラムはメラノサイト抗原と非メラノサイト抗原を同時に標的とすることで、分化黒色腫細胞および脱分化黒色腫細胞の両方を広く確実に認識できるようにすべきであり、また腫瘍微小環境での免疫抑制性機構の遮断によりT細胞のエフェクター機能を維持する戦略も含むべきであると我々は考える。

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