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発生:雄性の半数体胚性幹細胞から生きたトランスジェニックマウスを作製する
Nature 490, 7420 doi: 10.1038/nature11435
半数体や倍加半数体は、劣性形質の研究に重要な材料であり、作物育種に非常に重要だが、動物には自然の半数体はほとんど存在しない。哺乳類の半数体は生殖系列細胞に限られており、ほかには大規模に染色体欠損した腫瘍で時々見られるのみである。最近、メダカとマウスにおいて、半数体の胚性幹(ES)細胞の樹立が成功したことから、人工的に作製した哺乳類半数体細胞を遺伝学研究に利用できる可能性が出てきた。しかし、哺乳類の半数体ES細胞の可用性はまだ限定的であり、機能特性もあまりわかっていない。本研究では、精子を除核卵母細胞へ移植することで、マウスの雄性半数体ES(ahES)細胞株が樹立できることを示す。このahES細胞は、30回以上継代しても半数性と安定した増殖が保されており、多能性マーカーを発現し、in vitroとin vivoで3つの胚葉すべてに分化する能力を有し、胚盤胞へ注入するとキメラの生殖系列へ組み込まれた。ahES細胞はエピジェネティックには精子細胞と異なるが、成熟卵母細胞への細胞質内注入を行うと、生存能力と繁殖能力のある子孫を作り出すことができる。また、この卵母細胞注入法で、遺伝学的に改変したahES細胞から、生存能力のあるトランスジェニックマウスを作り出せる。本研究の結果は、雄性半数体の発生学的多能性を示し、劣性形質の遺伝学モデルを手早く作り出す新たな手法を提供する。さらに、生殖補助医療に問題解決への新たな手がかりを与えるかもしれない。

