医学:クローン解析で明らかになった腫瘍の増殖様式
Nature 488, 7412 doi: 10.1038/nature11344
単離した腫瘍細胞群を免疫不全マウスへ移植した最近の研究で、扁平上皮腫などのある種の腫瘍に高いコロニー形成能を持つ細胞が含まれることを示す証拠が得られており、これらはがん幹細胞(CSC)と呼ばれている。これまでのところ、CSCの性質は移植実験でしか解析されておらず、操作を加えない腫瘍の増殖では、CSCの存在は確認されていない。本研究では、遺伝学的な細胞系譜追跡法を用いた扁平上皮腫のクローン解析により、腫瘍の生じた自然な環境下におけるin vivoの腫瘍形成様式の解明を試みた。そのために、我々は遺伝学的な標識法を用いて個々の腫瘍細胞を標識し、腫瘍のさまざまな進行段階での経時的追跡を可能にした。意外にも、良性乳頭腫で標識された腫瘍細胞の大部分は、限定的な増殖能しか有していなかったが、ごく一部の集団は、その能力を長期間保持し、腫瘍の大部分を占める子孫細胞を生み出していることがわかった。乳頭腫内には2つの異なる増殖細胞区画が存在することが確認され、これは正常組織の構成や階層性、細胞運命挙動を反映していた。さらにクローン運命データの定量解析から、より持続的な集団は幹細胞様特性や1日2回の細胞周期を持つが、もう一方はもっとゆっくりとした細胞周期を持つ一過的な集団で、最終分化した腫瘍細胞を生み出すことが示された。このような挙動は、二重標識実験や詳細なクローン運命の特性と一致していた。それとは対照的に、浸潤性の扁平上皮腫でのクローンの大きさや増殖能の測定結果からは、異なる挙動パターンが明らかになり、これは最終分化能が制限された単一CSC集団が幾何級数的に拡大することと一致する。本研究は、操作を加えない固形腫瘍の増殖中にCSCが存在することを示す初めての実験的証拠である。

