地球:ヒマラヤ山脈における21世紀初頭の氷河質量変化の対照的なパターン
Nature 488, 7412 doi: 10.1038/nature11324
氷河は、地球の気候変動に対する最良の指標の1つであり、多くの山岳地域で水資源への寄与は大きく、全球の海水準上昇の主要な要因となっている。ヒンドゥークシュ・カラコルム・ヒマラヤ地域(HKKH)では、適切な氷河データが不足しているため、現在の地域的な物質収支を包括的に評価できていない。しかし、不均一な気候変動シグナルに対する複雑な氷河の応答パターンを示す間接的な証拠がある。本論文では、人工衛星によるレーザー高度測定と全球高度モデルを用いて、2003〜2008年にHKKHの東部、中央部、南西部で氷河が広範囲にわたって減少したことを示す。地域的な最大薄化速度は、ジャム・カシミール地域では毎年0.66±0.09 mであった。逆にカラコルム地域では、氷河は毎年数cm程度しか薄くなっていない。予想に反して、氷が岩屑に覆われた地域の平均薄化速度は、岩屑の覆いにより断熱されているにもかかわらず、岩屑に覆われていない氷の薄化速度と同程度である。ここで研究対象としたHKKH地域全体の2003〜2008年に限定した物質収支は、水当量で−0.21±0.05 m yr−1であり、氷河と氷冠に対する全球平均の見積もりより減少量がかなり小さい。この差は、主にカラコルムにおける平衡状態の氷河質量収支の効果である。HKKHの海水準への寄与は、現在の海水準上昇の1%になる。今回得られた2003〜2008年の質量収支は毎年−12.8±3.5ギガトン(Gt)であり、2003〜2010年について人工衛星による重力測定に基づいて最近見積もられた−5±3 Gt yr−1よりも減少量が大きい。インダス盆地とガンジス盆地の山地流域では、氷河の質量収支の不均衡が年間の平均河川放出量にそれぞれ3.5%と2.0%寄与しており、インダス盆地の上流域では最大10%の寄与となっている。

