Letter

生理:ナガスクジラ類の突進採餌を調整する感覚器の発見

Nature 485, 7399 doi: 10.1038/nature11135

海洋の最上位捕食者は、水中での採餌という難題に対してさまざまな解決法を進化させてきた。最もスケールが大きいものとして、ナガスクジラ類(ナガスクジラ科)は被食者が集まった海水を突進採餌(lunge feeding)によって飲み込んで濾過しており、これは脊椎動物の中でほかに類を見ない採餌戦略である。突進採餌を容易にするための形態的特殊化として、左右に分かれて頭蓋と緩く接続する顎、喉の大きく拡張する畝状構造である「腹側溝脂肪(ventral groove blubber)」、および下顎から腹側溝脂肪へと分岐する堅いy字型の繊維軟骨構造など、いくつかが挙げられる。しかし、こうした特徴どうしの関連性および機能的調整は、今のところほとんど解明されていない。本論文では、融合していない顎の間の繊維性結合部の中に埋め込まれた感覚器を発見したことを報告する。この器官は、複数のナガスクジラ科種に認められ、胎児期と成体期の双方で存在する。この器官には、祖先の最前列歯槽に由来する血管および神経組織が入り込んでおり、また、ゲル様基質内に釣り下げられた形の結合組織および乳頭が内含されている。こうした乳頭には、神経や被包性神経終末など、機械受容器の特徴が認められる。組織学的、解剖学的、および運動学的証拠は、この感覚器が、口を開閉するときの顎の動的回転、およびy字型の繊維軟骨構造との直接的で機械的な連結による腹側溝脂肪の拡張の双方に反応することを示している。下顎の血洞毛(vibrissa)とともに被食者の触覚をもたらすこの感覚器は、飲み込みの開始、調節、および終了段階を調整するのに必要な入力を脳に伝えており、このパラダイムは、突進採餌を行うナガスクジラ類の非定常的な水力学的モデルおよび標識データと合致している。ヒゲクジラ類の融合していない顎は漸新世後期(約2800万〜2300万年前)以来と起源が古いが、今回見つかった感覚器は、ナガスクジラ類以外の現生ヒゲクジラ類系統に全く認められないため、ナガスクジラ類が進化の過程で新規に獲得したものである。この革新的な感覚器は、水生脊椎動物の中でもきわめて過激なこの採餌方法で根本的な役割を担っており、史上最大の脊椎動物の進化を促すものであった。

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