Letter

医用工学:脳制御型の筋刺激による麻痺後の把持動作の回復

Nature 485, 7398 doi: 10.1038/nature10987

脊髄損傷を受けた患者では、随意運動に必要不可欠な脳–脊髄間の神経連絡が失われる。機能的電気刺激(FES)によって筋肉を収縮させる臨床システムは、四肢麻痺の患者が手の運動の制御を再獲得して、日常活動におけるかなりの自立性を達成するのに有効なことが明らかになっている。既存のFESでは、患者は残されている近位四肢の動きを利用して、麻痺した筋を収縮させる刺激プログラムを駆動し、それによって1〜2種類の基本的な把持動作を実行することができる。今回、それに代わるものとして、脳に永久的に埋め込んだ複数の電極からの記録によって制御されるFESシステムを開発した。まず、局所麻酔薬の注入によってアカゲザルの正中神経と尺骨神経を肘の位置で神経伝達阻害することで、C5またはC6脊髄損傷によって起こる麻痺の影響の一部を模擬的に作り出した。次に、皮質運動野のニューロン約100個からの記録をもとに、サルが麻痺した筋のいくつかに行わせようとしている活動を予測し、これらの予測を使って同じ筋群の刺激強度を制御した。この過程は、実質的に脊髄を迂回しており、サルは麻痺筋の随意運動制御を取り戻した。この成果は、脳制御型FESを用いてヒト患者の手に同様の機能回復をもたらすための大きな前進である。この「神経プロテーゼ」によって、患者は従来のFESシステムによる場合よりはるかに自在で器用な手の動きが可能になると期待される。

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