Letter 生理:上皮では過密化が生細胞の押し出しを引き起こして恒常的な細胞数が維持される 2012年4月26日 Nature 484, 7395 doi: 10.1038/nature10999 上皮が保護的障壁となるためには、分裂する細胞の数と死滅する細胞の数とを合わせることで細胞数を恒常的に維持しなくてはならない。死にゆく細胞は、その消失を補う細胞分裂を引き起こすことができるが、増殖による過密化を細胞死が救済しうる仕組みは知られていない。上皮でアポトーシスを誘発すると、死にゆく細胞が押し出されて障壁機能が維持される。押し出しは、死にゆく細胞が周囲の上皮細胞にアクトミオシンリングを収縮するためのシグナルを送り、この収縮によって死細胞が閉め出されることによって引き起こされる。しかし、正常な恒常状態にある際に何が細胞死を引き起こすかは不明である。今回我々は、ヒト、イヌ、セブラフィッシュの細胞では、増殖と遊走による過密化が生細胞の押し出しを誘導し、これによって上皮細胞数が制御されることを示す。生細胞の押し出しは、in vivoでは最も密集度が高い部位で起こり、in vitroでは実験的に過密化させた単層によって引き起こされる。アポトーシス細胞の押し出しと同じく、過密化によって起こる生細胞の押し出しも、スフィンゴシン1–リン酸シグナル伝達とRhoキナーゼ依存性ミオシン収縮を必要とするが、伸展活性化チャネルを介するシグナル伝達を必要とする点で異なっている。また、セブラフィッシュで伸展活性化チャネルPiezo1を欠損させると押し出しが起こらなくなり、上皮細胞塊が形成される。今回の知見は、恒常的な代謝回転が行われている際には、狭い基層上での上皮細胞の増殖と分裂が過剰な密集を引き起こし、それによって細胞が押し出され、その結果生存に必要な因子が失われて細胞死が起こることを明らかにしている。これらの結果は、生細胞の押し出しは過剰な上皮細胞蓄積を防ぐ腫瘍抑制機構である可能性を示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る