Letter 物理:数百個のスピンからなるトラップイオン量子シミュレーターにおけるエンジニアリングされた二次元イジング相互作用 2012年4月26日 Nature 484, 7395 doi: 10.1038/nature10981 長距離量子スピン相関の存在は、凝縮物質系のさまざまな物理現象の基礎となり、その中にはおそらく高温超伝導も含まれる。しかし、スピン液体のようなエキゾチックな強相関スピン系の性質の多くは、調べるのが難しいことが示されており、その一因はN体のエンタングルメントなどの計算がたったN≈30個程度の粒子を扱えなくなることである。ファインマンは、量子シミュレーター、すなわち、量子ビット(キュービット)を使って構築した特殊用途用の「アナログ」プロセッサーがこのような問題を解くのに本質的に適していると予測した。量子磁性では、多数の実験によりこの方法の実行可能性が実証されているが、数十個より多いキュービットの二次元、あるいは三次元格子上に局在するスピン間が制御されて、相互作用も調節可能なシミュレーションはまだ実証されていない。その一因は、大規模なキュービット配列の実現が技術的に困難なことである。本論文では、数百個のスピン1/2粒子(ぺニングトラップ中に蓄積したベリリウムイオン)から自然に生じた二次元三角結晶上の領域可変なイジング型スピン–スピン相互作用Ji,jを実証する。これは、これまでの実験よりも1桁以上大きく、計算上意味のあるスケールである。スピンに依存する光双極子力は反強磁性相互作用J i,j∝di,j−aを生成できることを示す。ここでaは、0≤a≤3であり、di,jはスピン対間の距離である。これらのべき乗則は物理的に無限大領域(a=0)、クーロン型(a=1)、単極子–双極子(a=2)、および双極子–双極子(a=3)結合に相当する。実験は0.05≤a≤1.4に対して理論ときわめてよく一致することが証明された。この実証に、高いスピン計数、ぺニングトラップの良好な量子制御と技術的な複雑さが少ない性質を合わせれば、量子磁性のほかの方法では計算不可能な問題のシミュレーションが実現可能となる。 Full Text PDF 目次へ戻る