Letter

生理:ハトの上嘴にある鉄含有量の多い細胞群はマクロファージであって、磁気感受性ニューロンではない

Nature 484, 7394 doi: 10.1038/nature11046

脊椎動物の磁気感知にかかわる分子機構や細胞機構の解明は解答困難な科学的問題の1つである。1つの仮説は、マグネタイト(磁鉄鉱)を含む磁気受容器を用いることで磁気情報をニューロンの電気信号に変換するというものである。これまでの研究では、ハトで磁気感知系が見つかったとされており、この系は鳥類種に共通のもので、嘴の表皮下の特異的部位6か所にあるマグネタイトを含む三叉神経の求心性繊維からなると考えられている。これらの研究はこの分野で広く受け入れられており、行動生物学でも物理学でも大きな信頼を得ている。今回我々は、カワラバト(Columbia livia)の上嘴の吻部–中央部にある鉄含有量の多い細胞集団がマクロファージであり、磁気感受性ニューロンではないことを明らかにする。カワラバトの上嘴の特徴の系統立った分析により、表皮下のstratum laxum、呼吸上皮の基底領域、および羽嚢先端部に、鉄を多く含む細胞があることが明らかになった。磁気共鳴画像法とコンピューター断層撮影法を用いて作成したカワラバト嘴の三次元見取り図上で、鉄含有量の多い細胞の位置のマッピングを行い、その分布と数に予想外のばらつきがあることがわかった。この観察結果は、磁気感知という役割とは一致しない。嘴に固有ではないこれらの細胞の超微細構造分析から、細胞内構造として、フェリチン様顆粒、シデロソーム、ヘモジデリン、糸状仮足など、鉄を多く含むマクロファージの特徴が見られることが明らかになった。これらの細胞はマクロファージであって磁気感受性ニューロンではないとする我々の結論は、免疫組織学的解析で、抗原提示分子である主要組織適合性複合体クラスIIとこれらの細胞とが共局在することからも裏付けられる。今回の知見により、鳥類の真のマグネタイト依存性磁気受容器を改めて探すことが必要となった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度