Letter 医学:Hsp72は筋肉機能を保存し重症の筋ジストロフィーの進行を遅らせる 2012年4月19日 Nature 484, 7394 doi: 10.1038/nature10980 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は重症の進行性筋萎縮性疾患であり、ジストロフィン遺伝子の変異が原因で、この変異によって細胞膜安定化タンパク質のジストロフィンが欠損するようになる。ジストロフィンを欠く筋繊維は脆弱でCa2+流入に過敏性を示し、Ca2+流入は炎症および筋変性経路を活性化する。現時点でDMDの治療薬はなく、現行の治療法は有効でない。今回我々は、筋肉内での熱ショックタンパク質72(Hsp72)の発現を増大してやると、筋肉強度が維持され、ジストロフィーの病態が軽減されることを2種類の筋ジストロフィーマウスモデルで明らかにした。現在糖尿病治療薬として臨床試験段階にある薬理学的Hsp72誘導因子のBGP-15の投与は、mdxジストロフィーマウスの重篤な影響が出ている横隔膜筋で、筋肉の構造、強度、収縮機能を改善した。DMDの表現型模写であるdkoマウスは、重症の脊柱湾曲(脊柱後湾)、筋力低下、早期死亡が起こるが、BGP-15は脊柱後湾を低減させ、四肢と横隔膜筋のジストロフィー病態生理を改善し、寿命を延長した。mdxとdkoマウスの重度に冒された筋肉では、筋小胞体/小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA、細胞質内Ca2+除去を行う主要なタンパク質)が機能していないが、Hsp72はストレス条件下でSERCAと相互作用してその機能を維持し、これは最終的にはHsp72発現上昇で見られた筋肉変性低減の一因となった。BGP-15の投与は、ジストロフィーの骨格筋でも同様にSERCA活性を上昇させた。我々の結果は、BGP-15の投与による筋肉でのHsp72発現上昇が、単独治療あるいは遺伝子、細胞、薬理学的治療などの考えられるほかの治療法の補助的手段として、DMDおよびそれに関連する疾患の重要な治療法となる可能性を実証している。 Full Text PDF 目次へ戻る