Letter 細胞:ゲノム全域でのタンパク質–DNAの結合動態から示唆される、転写因子の機能を調節する分子クラッチの存在 2012年4月12日 Nature 484, 7393 doi: 10.1038/nature10985 生物にとって、遺伝情報への動的アクセスは、発生や環境への応答にきわめて重要である。したがって、ゲノム諸過程の調節は、ゲノムの機能をかなり急激に変化させるような仕組みによって行われているはずである。従来型のクロマチン免疫沈降法(ChIP)実験では、転写因子の結合率(占有率)は調べられるが、結合動態についての情報は得られず、任意の遺伝子座における転写因子の機能を予測するには不十分である。転写因子の結合動態をゲノム全域にわたって調べるため、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の塩基配列特異的転写因子Rap1を用いて、競合的クロマチン免疫沈降法を行った。Rap1の結合動態とRap1占有率の間には弱い相関関係(R2=0.14)しか認められなかったが、機能との関連性は占有率よりも結合動態のほうが強かった。Rap1による長い占有は転写の活性化と関連していたが、結合の高速な代謝回転(「トレッドミル状態」と命名)は低い転写量と関連していた。つまり、従来型のChIPでは全く同じに見えるDNA結合事象でも、基盤にある相互作用様式が違っており、それらが機能的に正反対の結果をもたらしている可能性がある。転写因子の結合の代謝回転は、転写因子結合の機能的帰結の決定における重要な制御ポイントの1つであり、この代謝回転は主として転写因子とヌクレオソームとの競合の制御によっていると考えられる。このモデルからは、転写因子をトレッドミル状態から安定的結合状態へ、あるいはその逆へと迅速に切り替えて転写因子の機能を調節する、クラッチに似た機構の存在が予測される。 Full Text PDF 目次へ戻る