Letter 神経:単一ニューロンのウイルスによる長距離追跡によって決定した嗅覚皮質の感覚地図 2011年4月14日 Nature 472, 7342 doi: 10.1038/nature09945 脳での感覚情報の表現のされ方は、軸索からの入力が定型的にマッピングされる場合もあれば、個体間で異なるパターン形成による場合もある。嗅覚の場合、一次感覚処理中枢である嗅球では定型的なマッピングが明らかである。嗅球では、さまざまな匂い物質が、空間的位置変動のない糸球体で、独特な組み合わせパターンの活動を誘発する。各糸球体の活動は、約20〜50個の「ホモタイプな」僧帽・房飾(MT)ニューロン群によってさらに高次皮質の処理中枢へと伝達される。皮質では、標的ニューロンが複数の糸球体からの情報を統合し、化学的に異なる匂いの独特の性質を区別して検出する。これがどのような仕組みでなされているかはいまだに不明だが、その原因はおそらく、個々のMTニューロンによる糸球体情報の皮質へのマッピングが解明されていないためだろう。今回我々はウイルスを使った新しい追跡法と三次元脳再構成法を用いて、複数のMTニューロン群を特定し、皮質への投射を比較した。ある処理中枢への軸索投射パターンには嗅球における大規模な編成がそのまま維持されているのに、別の処理中枢への場合には再編成が起こっていることが明らかになり、異なった標的では異なったコード化方針がとられている可能性が示唆された。しかし、個々のニューロンレベルでは、どちらの領域でも糸球体の規則性も定型性も維持されていなかった。むしろ、同一糸球体からのホモタイプなMTニューロンが広い領域に分散し、その領域には個体差が見られた。意外にも、同一個体でもMTニューロンの配線には幅広い多様性が見られる。ホモタイプなMTニューロン対からの軸索は互いから離れ、異なった場所で一次分岐を作っており、ホモタイプのニューロン対、ヘテロタイプのニューロン対の分岐の70〜90%は重なり合っていない。皮質における感覚地図のこのような明らかな再編成は、空間的位置の異なる糸球体からの情報の組み合わせによる統合の幅を広げる解剖学的基盤であり、このことから、それ以外の点ではよく似た出力ニューロンの多様性を高めるうえでの予想外な役割が予測される。 Full Text PDF 目次へ戻る