Letter 生態:生物多様性はニッチ分割を介して水質を改善する 2011年4月7日 Nature 472, 7341 doi: 10.1038/nature09904 水体への過剰な栄養負荷は、世界中で水質汚染の主因の1つとなっており、河川流域の栄養レベルの管理は、多くの環境政策の重要な目標である。土壌および水から栄養物質を除去する効率は、種数の少ない生態系よりも種数の多い生態系のほうが高いことが、過去20年間の多くの研究で明らかにされている。このことから、栄養の取り込みや貯蔵を管理するためには生物多様性の保全が有用な手段となる可能性が示唆されているが、種の多様性が栄養の取り込みに影響を及ぼす具体的な生物学的機構が明らかになっていないこともあり、こうした示唆には異論も多い。本研究では、河川バイオフィルムのモデル系を利用して、地球規模で懸念されている栄養汚染物質である硝酸塩の取り込み量および貯蔵量が、藻類種間のニッチ分割によって増加することを明らかにする。本実験では、自然河川に典型的なさまざまな流水環境および撹乱状態を模倣して河川メソコスム150本を作製し、それらのバイオフィルムで増殖する藻類の種数を操作した。15N標識硝酸塩を使って測定した窒素取り込み速度は、種の豊かさが増すのにしたがって直線的に上昇し、種間のニッチの差異によって促進された。1つの河川中では、それぞれ特有の生息環境を異なる種類の藻類が優占するようになるため、多様性の高い群集ほどバイオマスが増大して15Nの取り込み量が増加した。1つの河川内にあるすべての生息環境を均一化して、こうしたニッチ機会を実験的に排除すると、多様性が窒素の取り込みに影響を及ぼさなくなり、バイオフィルムは衰退して単一種に優占されるようになった。今回の結果は、種数の多い群集ほど環境のニッチ機会をより大きく活かせることや、この仕組みによって、多様な系は生物にとって利用可能な窒素などの資源をより多く捕捉できることを示す、直接的証拠となる。したがって生物多様性は、自然生態系に対する栄養汚染の生態学的影響を緩和するのに寄与していると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る