Letter 遺伝:ストレスを受けた植物の世代を越えたレトロトランスポジションはsiRNA経路が防御する 2011年4月7日 Nature 472, 7341 doi: 10.1038/nature09861 真核生物ゲノムのかなりの部分を構成するレトロトランスポゾンは、宿主の後生的メカニズムによって抑制され、その無秩序な増殖が防御されている。しかし、それがどのようにして行われているのかは、明らかにされていない。今回我々は、熱ストレスを受けたシロイヌナズナ(Arabidopsis)の実生で、ONSEN(温泉)と命名したコピア型レトロトランスポゾンが、転写の活性化を生じたばかりでなく、染色体外DNAコピーをも合成したことを明らかにした。低分子干渉RNA(siRNA)の生合成に障害を持つ変異株では熱誘導性のONSENの蓄積が引き起こされたが、栄養組織にトランスポジションが生じたことを示す証拠は得られなかった。ストレスを受けた後、ONSEN転写物および染色体外DNAはいずれも徐々に減少し、20〜30日後には検出されなくなった。意外にも、siRNAを持たないストレス植物体の子孫では、新たなONSENの挿入が高頻度で観察された。挿入パターンから、この世代を越えるレトロトランスポジションは、花発生期に、配偶子形成に先立って起こっていることがわかった。このように、siRNA生合成に異常を持つ植物では、ストレスの記憶が発生の間を通して維持され、生殖器分化時にONSENのトランスポジションが行われるようになっている。ストレスを受けた野生型植物の子孫およびストレスを受けていない変異型の実験対照植物ではレトロトランスポジションが認められず、環境ストレスが引き起こすレトロトランスポジションの抑制にsiRNA経路が重要な役割を担うことが示された。また我々は、ONSENの挿入に関して野生型近交系統および実験的に誘導した変異体が近傍の遺伝子に熱応答性を与えたことから、可動性の突発がストレス応答性の新たな調節遺伝子ネットワークを生み出す可能性があることを見いだした。 Full Text PDF 目次へ戻る