Letter 生化学:遺伝子にコードされているアミノ酸ピロリシンのリシンからの完全生合成 2011年3月31日 Nature 471, 7340 doi: 10.1038/nature09918 自然界の遺伝暗号でコードされていることが知られている22番目のアミノ酸に当たる「ピロリシン」は、メチルアミンからメタンを生成する既知経路のすべてに必要である。ピロリシンは、L-リシンのε-アミノ基とアミド結合するメチル化ピロリンカルボン酸を有している。ある種の古細菌では、3種類のメチルトランスフェラーゼがさまざまなメチルアミンからのメタン合成を開始させるが、これらの酵素は、ピロリシンとして翻訳されるインフレームのアンバーコドン(UAG)を持つ遺伝子によってコードされている。メタンを生成する古細菌に由来するpylTSBCD遺伝子で形質転換された大腸菌は、菌体内で生合成されるピロリシンをタンパク質に取り入れることができる。UAGをピロリシンとしてデコードするには、tRNAPyl(別名tRNACUA)を生成するpylT、およびピロリシルtRNAシンテターゼをコードするpylSが必要である。pylB、pylC、およびpylD遺伝子は、いずれもtRNA非依存性のピロリシン合成に必要である。ピロリシンは、遺伝子にコードされるアミノ酸の中で、唯一生合成経路が明らかにされていない。本論文では、2分子のリシンからピロリシンを生成するpylBCD依存的な経路に関して、遺伝子および質量分析による証拠を示す。我々は、UAGがコードする新発見のアミノ酸「デスメチルピロリシン」が、pylC依存性の過程およびそれに続くpylD依存性の過程で、リシンおよび外因性のD-オルニチンから生成されるが、これがさらにピロリシンへ変換されるわけではないことを明らかにする。この結果は、ラジカルSAM(S-アデノシル-L-メチオニン)タンパク質PylBが、3-メチルオルニチンを生成するリシンムターゼ反応を媒介し、その3-メチルオルニチンがPylCの作用で第二のリシン分子と結合して、PylDによる酸化でピロリシンとなることを示している。リシンがピロリシンの唯一の前駆体であることがわかったことは、遺伝暗号およびアミノ酸生合成経路の進化に関する考察にさらなる情報を与えるだろう。また、この経路の中間体は、有用な修飾残基を持つ組み換えタンパク質の生産にpyl系を使用できる新しい手段をもたらす可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る