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生理:プロゲステロンはヒト精子の主要なCa2+チャネルを活性化する

Nature 471, 7338 doi: 10.1038/nature09767

ステロイドホルモンであるプロゲステロンは卵を囲む卵丘細胞から放出され、ヒトの精子を強力に活性化し、精子を卵へと誘引し、卵保護層の通過を助ける。プロゲステロンは精子へのCa2+流入を引き起こし、精子のハイパーアクチベーション、先体反応、卵への走化性など、受精を成功させるのに不可欠な複数のCa2+依存性生理反応を開始させる。卵巣ホルモンとしてのプロゲステロンは、よく知られているプロゲステロン核内受容体を介する遺伝子発現調節によって作用するが、転写抑制状態にある精子に対するプロゲステロンの作用は説明されておらず、膜にある特殊な非ゲノム的プロゲステロン受容体によって仲介されると考えられている。この非ゲノムプロゲステロン受容体の正体とそれがCa2+流入を引き起こす仕組みは、ヒトの生殖に関するまだ解明されていない重要な問題となっている。今回我々は、プロゲステロンによって活性化されるCa2+チャネルの同定によって、ヒト精子に対するプロゲステロンの非ゲノム的作用の作用機構を明らかにした。ヒト成熟精子を使ってパッチクランプ法で測定を行い、ナノモル濃度のプロゲステロンが、精子鞭毛のpH依存性Ca2+チャネルCatSperを急激に著しく活性化することがわかった。さらに、ヒトCatSperが、細胞内pHの上昇と細胞外プロゲステロンによって相乗的に活性化されることを実証した。ヒトCatSperはさらにプロスタグランジンによっても活性化されるが、それにはプロゲステロン結合部位とは見たところ別の結合部位がかかわっているらしい。我々の実験条件では二次メッセンジャーシグナル伝達の関与は裏付けられなかったので、CatSperあるいは直接それに結合するタンパク質が、不明だった精子の非ゲノム的プロゲステロン受容体として働いているらしい。CatSperに関係するプロゲステロン受容体が精子特異的で、ゲノム的なプロゲステロン受容体とは構造的に異なるならば、新しいタイプの非ホルモン性避妊薬開発の有望な標的になると考えられる。

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