Letter 遺伝:ショウジョウバエにおける転写伸長促進を介したX染色体の遺伝子量補償 2011年3月3日 Nature 471, 7336 doi: 10.1038/nature09757 性染色体が進化した結果、多くの種で雌は2本のX染色体を受け継ぐが、雄は1本しか受け継がないために遺伝子量の補償が必要となった。MSL(male-specific lethal)複合体は、2つの性の間でX連鎖遺伝子の発現を均等にするために、ショウジョウバエ(Drosophila)の雄の1本しかないX染色体の転写を増加させる。この遺伝子量補償に用いられる生化学的機構は、転写レベルの広い動的範囲と、異なる発現パターンに対して機能しなくてはならない。MSL複合体は転写伸長の調節により遺伝子量補償を制御していることが示唆されており、このモデルはその後、雄のX連鎖遺伝子の転写領域に対するMSL複合体とMSL依存的ヒストンH4リジン16残基のアセチル化のマッピングで、3′末端側への偏りが認められることにより裏付けられた。しかしながら、染色体全体の影響の規模が小さく、生化学的解析に適したin vitroシステムがないため、機構レベルでのMSL機能の実験的解析は困難だった。本研究ではGRO-seq(global run-on sequencing)を用いてゲノム規模レベルで、RNAポリメラーゼII(RNAP II)に対するMSL複合体の特異的な影響を調べる。その結果、MSL複合体は活発なX連鎖遺伝子の転写領域全体にわたって、RNAP IIの進行を促進することにより、転写を増強することが示された。標準的な遺伝子特異的制御の下流での転写生産量の向上によって、染色体全体に存在する多様な遺伝子群に対して遺伝子量補償が行われる仕組みを説明できるかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る