Letter がん:SCFFBW7は、MCL1をユビキチン化および分解の標的として細胞のアポトーシスを調節している 2011年3月3日 Nature 471, 7336 doi: 10.1038/nature09732 標的治療の有効性は、その処置が奏功する患者集団の識別に大きく左右される。腫瘍抑制タンパク質をコードする遺伝子FBW7の欠失は、ヒトの乳がん、結腸がんおよびT細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)をはじめとする種々のがんにおいて高頻度で認められる。このゲノムデータと一致して、T細胞のFbw7を欠失させたマウスでのT-ALL発症は、FBW7がT-ALLに対するがん抑制因子として作用していることの裏付けとなる。FBW7に抗腫瘍活性をもたらす分子機序の解明は、現在盛んに研究が行われている領域の1つである。この機構は、Jun、Myc、サイクリンEおよびnotch 1をはじめとする、がんと関連のある重要なタンパク質が、FBW7を介して分解されることと部分的に関係すると考えられる。これらのタンパク質は、すべてがんタンパク質としての活性を持ち、白血病などのヒトの種々のがんで過剰に発現している。Jun、Mycまたはnotch 1の過剰発現は、細胞の増殖促進に加え、プログラム細胞死も誘導する。このため、Jun、Mycまたはノッチ1のすべて、またはいずれかの発現量が増加した条件下で、FBW7を欠損する細胞が細胞死を回避する機序については、不明な点が多く存在する。今回我々は、E3ユビキチンリガーゼSCFFBW7(FBW7をF-ボックスタンパク質として持つSKP1–カリン-1–F-ボックス複合体)が、生存促進活性を持つBCL2ファミリーの一員であるMCL1を、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3によるリン酸化依存的にユビキチン化および分解する際の標的とすることによって、細胞のアポトーシスを制御することを示す。ヒトT-ALL細胞は、FBW7の欠失とMCL1の過剰発現の密接な関連を示した。これに対応するように、FBW7を欠損するT-ALL細胞株は、多標的キナーゼ阻害薬ソラフェニブに特に高い感受性を示すが、BCL2拮抗薬ABT-737には抵抗性を示す。遺伝子レベルでは、FBW7の再導入またはMCL1の欠失により、ABT-737に対する感受性が回復することから、MCL1は、治療に関連した迂回生存機構として、FBW7欠失細胞にアポトーシスを回避させるように働くことが確認された。今回の結果は、FBW7が直接腫瘍を抑制する分子機構を理解する手がかりとなり、FBW7を欠失するT-ALLの患者に対する標的治療を行ううえで大きな意味を持つ。 Full Text PDF 目次へ戻る