Letter 発生:FGF下流のランダムな細胞運動勾配が羊膜動物胚の伸長を制御する 2010年7月8日 Nature 466, 7303 doi: 10.1038/nature09151 脊椎動物の胚は長い前後体軸を特徴とし、これは胚後部の増殖領域からの漸進的な細胞の堆積によって形成される。本研究では、ニワトリ胚で組織切除を用い、尾部前体節中胚葉(PSM)が体軸伸長に主要な役割をもつことを示した。微速度顕微鏡観察を用い、胚伸長時のPSMでの蛍光標識した細胞移動を解析したところ、PSMでの細胞の移動と方向性に、後方から前方への明確な勾配がみられた。我々は、標識細胞と同時にPSM細胞外マトリックスの移動も追跡し、細胞の全体的な移動から細胞外マトリックスの移動を差し引いた。その結果、細胞の運動性には勾配性がみられるものの方向性を欠いており、このことはPSMにおける体軸伸長と関連した後部細胞の移動は内因性のものではなく、組織の変形を反映したものであることが示唆された。PSMに沿った細胞運動の勾配は、繊維芽細胞増殖因子(FGF)/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)勾配と対応しており、この勾配はこの組織での細胞運動性の制御にかかわっていることが以前に示されている。FGFシグナル伝達の機能獲得および機能欠失実験は、いずれも運動性勾配の破壊と体軸伸長の減速を引き起こした。さらに、細胞移動阻害剤(ブレビスタチンまたはRhoK阻害剤)で処理した胚では体軸伸長速度が遅くなるが、細胞周期阻害剤の処理ではそれが起こらない。PSMでのFGFシグナル伝達下流のランダムな細胞運動性の勾配が、羊膜動物胚での後部の伸長を制御していると考えられる。以上の結果は、組織伸長が、個々の細胞の移動の方向性の調節ではなく、勾配のあるランダムな細胞移動の全体的な調節から生じる創発特性であることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る